創造力は“内側を育てる保育”から生まれる

カタカタを押す子と保育士 わたしたちの保育

ひらめきは“心の内側が整ったときに自然とあふれてくるもの”

「どうしてそんなにたくさんのひらめきが生まれるんですか?」

 こういう質問を、私はよくいただきます。保育のおうちのイベント企画を立てたり、日頃感じていることを話している時に、相手から、まるで私が特別な才能を持っているかのように言われることがあります。

“ひらめき”は特別な才能ではない

 けれど私は、ひらめきは特別な才能ではなく、誰もが持っている”内側の仕組み”が整うことで自然に生まれるものだと感じています。日々の保育や家庭の切り盛り、地域での活動、社会への働きかけ。今までの人生を振り返ってみても、私が特別恵まれた才能を持って生まれたのなら、それぞれもっともっと上手くできていたんじゃないかなと思います。

 幼い頃から本が好きで、絵本から始まり、学生時代や勤務保育士の時代も含め、図書館や本屋にしょっちゅう通っていました。学校の勉強はそれほど得意ではありませんでしたが、本を読むとあれ?これってこないだあったあのことと結びつく?なんていう発見がたくさんありました。

そして、本を通じて知った知識や技術を試してみるようと勤めてきました。保育現場、経営・家庭・地域の中で、たくさんのこどもたちや大人の人に関わりながら、創造性の源には3つの要素があり、互いに関係していると確信するようになったのです。

ひらめきは「3つの要素」が連動して生まれる

  • 体験・経験
  • 知識
  • マインドセルフ(心身の整い)

体験・経験、知識、心身の整い、この3つが揃った時、ひらめきは”点と点がつながり、線となていくように”自然とつながりあい、循環が始まります。

この循環が続くことで、いつの間にか、「新しい視点」、「新しい解釈」、「新しい発想」が生まれ続ける。

 そして実は、この3つは0〜5歳の幼児期にこそ、最も育ちやすいものなのです。

「マインドセルフ」、聞きなれない言葉かもしれませんが、「マインドフルネス(Mindfulness)」や「セルフコントロール(Self-Control)」などの、「自分の心(マインド)を客観的に観察し、今ここに集中する」、「自分自身を優しくケアする」、「自分の行動や感情をコントロールする」といった自己認識や自己管理の態度全般を表します。岡本は、「心身の整い」という表現が好きで、マインドセルフの意味でよく使っています。

なぜ幼児期なのか: AI時代に必要なのは“内側の成長”

 今、世界は大きく変化しています。AIが社会のあらゆる領域に浸透し、仕事の仕組みも価値観も変わりつつあります。大量生産・効率化・マニュアル化の時代は終わりました。”決められた通りにできる人”よりも、「自分の内側から意味を作り出せる人」、「状況を捉え、価値を再編集できる人」、「誰かのために創造できる人」が求められる時代です。

 そこに必要なのは、まさに、

  • 小さな体験を自分で意味づける力
  • 感情で世界を理解する力
  • 心が整っているからこそ発揮できる集中力・判断力
  • 得た知識を組み合わせ、新しい形に変える力

つまり、“内側を育てる力”です。

日本の課題:「外側だけを整える社会」の限界

 日本は、「外側」、つまり制度やルール、仕組みを整えることで成長・発展してきました。一方で、近年の産業構造の変化に合わせて必要となってきた、

  • 想像力
  • 主体性
  • 感性
  • 思考の柔軟さ

といった、「内側」を育てる文化はまだ十分に広がっていません。

 それゆえに、内側が大切になるIT産業や、新しいビジネスの創造などが日本は世界に大きく遅れをとっており、「つくる側」ではなく、「使う側」にまわってしまいがちな昨今です。

 けれど、私はこの状況を悲観していません。

 むしろ、私の専門分野である「保育」こそ、日本が世界で再び輝くための土台づくりを担えると確信しています。

保育のおうちが実践する“第5ステージの保育”とは

時代は、第5ステージへ

 世界は、新しい技術の出現とともに、変化してきました。産業革命の後に注目してみても、

  • 第1ステージ 大量生産の時代。石炭や石油、電力などエネルギーと労働力・蓄積されたお金(資本)の活用と、豊かな中間層の出現の下、供給力が決め手となり、今は中国やインドなど新興国がその中心となっています。
  • 第2ステージ IT技術が急速に発展し、論理と計算の時代がやってきました。この時代は、異文化でもまれ、互いに言葉で相手に意思を伝え合う英語や中国語を使う国・地域が伸びてきた一方で、暗黙の共通理解、文脈(コンテキスト)を背景に気をつかい合う日本には不利な時代となりました。
  • 第3ステージ インターネットやクラウドなどプラットフォーム技術がIT技術に上乗せされ、再び大資本を調達できるかが鍵となってきました。第2ステージで規模拡大したGAFAなどごく少数のトッププレーヤーが全てを得る時代となり、日本はもはやこの分野では勝負できなくなってしまいました。
  • 第4ステージ 科学・技術を活用・運用する側の都合を重視した画一性は、豊かな社会に暮らす多様な価値観と合わなくなり、感性、共感、体験、物語の時代となってきました。一方で、価値観のゴリ押し、似通った価値観の人のグループが違う価値観の人たちを排除の傾向も強くなり、社会の分断が世界中で進みつつあります。
  • 第5ステージ 社会の分断を放っておけば、差別や排除、戦争などという愚かな行為の後押しに繋がってしまいます。心ある人たちは、「創造X感性X共創」という発想で、新たな産業や社会を提案しています。多様な価値観を認める。その前提として、一人一人が尊重されることが当たり前となる。一人一人の持ち味を活かすために協力し合う段階。

もちろん、世界中が全て同じステージにいるというわけではなく、ある地域はこの段階、ある社会はこの段階からこの段階への移行中、などと混ざり合っています。

…と、次第に姿形を変えてきました。

 ことに、今、第4ステージにある私たちが考える第5ステージは、ぼんやりとしか見えていない未来の姿。放っておけば、そこにはたどり着けず、いがみ合いや身内優先、勢いのいい言葉が先んじて、取り返しのつかない破滅へと向かっていく恐れもある。どんなに困難であっても、世界は、私たちの社会は、第5のステージへとたどり着かなければなりません。

保育のおうちが実践する保育

創造性を育む3つの要素

 先日、散歩で見つけた落ち葉から「色はどうして変わるの?」という探求が始まりました。絵本を読み、葉を煮出し、色水づくりへ──一つの体験が、知識と喜びに変わりました。きっとこの子は、将来、私にはとても想像できないところまで知識や体験を広げるんだろうな。そんな確信を持てる保育の瞬間でした。

 保育のおうちが目指すのは、ただ安全に預かるだけでも、ただ楽しく過ごすだけでもありません。それは、保育の世界では当たり前に実現しなければいけないこと。

 私たちは、「ひらめきが循環する内側の成長」を後押しすることを目指しています。そのために、私たちが重視している環境づくり。それは…

小さな体験を“大きく知る体験”に変換する保育

 散歩の途中に見つけた虫、落ち葉の色、砂の重さ、音の響き。こどもの「なんで?」を深掘りし、体験を知識へ結びつける保育を行います。

知識が拡張しやすい”ていねいな関わり”

 知識は詰め込むものではなく、感じたもの、見つけた喜びから興味が湧き、自然に増えていくもの。その流れができるよう、家庭的な少人数の環境でこどもに関わります。

心と体を整える”マインドセルフ*な環境”

 ゆったりとした時間、安心できる関係性、過度な刺激の排除。これらはこどもの内側の整いにつながり、ひらめきが一気に増えます。

こどものひらめきは「未来の社会・産業の土台」になる

 これからの日本が必要としているのは、世界の真似ではなく、日本らしい創造を生み出せるこどもたちの育ちです。

 その出発点は、0〜5歳の大切な時期の”内側を育てる保育”にあります。

 保育のおうちは、ただ預かる場所というだけでなく、こどもたちが自分の内側を育て、ひらめきを循環させる場として、今後も取り組みを続けていきます。

終わりに

 ひらめきは、「特別な人が持つ能力」ではありません。誰もが持っている内側の仕組みが整えば、自然に生まれていくものです。

 そして、その土台づくりは、まさに幼児期の保育によって生まれます。

 保育のおうちは、これからもこどもたちの未来を、そして社会を、ていねいに支え続けたいと考えています。 

施設長

 いつも心は元気いっぱいの3歳児。駅前のふとん屋の娘が保育士となり、結婚・離婚、独立起業とまるでジェットコースターのような人生を楽しんでます。

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